日本では急速な高齢化社会を迎えるにあたり、高齢者向け施設の不足が予想されています。そこで国では補助制度を設け、有料老人ホームなど、さまざまな高齢者向け施設の建設が急ピッチに進んでいます。今回の建物は「サービス付き高齢者向け住宅」という施設で、基本的には高齢者向けの共同住宅です。各室にはナースコールを設け、何かあれば職員が駆けつける「見守り機能」を付加した賃貸住宅になります。設計で留意したことは、とにかく明るく楽しい雰囲気の空間づくり。長い廊下を挟んで個室が並ぶと、どうしても圧迫感のある暗い廊下となりがちで、入居者の気持ちまで暗くなってしまいそうです。そこで住人たちが顔を合わせる共用スペース(食堂や廊下)には吹抜けや天窓を設け、昼間は照明をつけなくても過ごせるくらいの明るさを確保しました。また、各室の出入口は入居されている個人と社会の接点であり、戸建て住宅であれば「玄関」にあたります。その玄関の顔づくりは入居者にとっても重要なので、引き戸や照明の見せ方に工夫を凝らしました。