もともと住まわれていた家屋が2016年の熊本地震で被災し、大規模半壊となりました。敷地と遊歩道を挟んで隣接する「鶯川」の土手が地震により動いたため、敷地東側に地盤沈下が起き、その部分から建物が「への字」に折れ曲がったという状況。当初は沈下した建物部分のみを解体する「既存建物の減築」により再生しようと試みましたが、「減築+改修補強工事」となるので、かなりの建築費が必要となります。
「それくらい費用がかかるのなら、むしろ全部解体して小さな家を新築した方がいいのではないか?」
最終的には地盤が沈む影響がなかった敷地西側部分に、板倉構法による小住宅を計画しました。この板倉構法による熊本地震復興住宅においては、筑波大学名誉教授の安藤邦廣先生よりご指導を賜りました。あらためて厚く御礼申し上げます。
板倉構法:日本古来の神社や穀物倉庫などにみられる木造建築技術を応用した構法。柱の間に杉の厚板(約30ミリ)を落し込むことで、この厚板が室内仕上になると同時に耐力壁として機能する。地震の揺れに対して粘り強い家となる。